専任技術者の要件|営業所技術者に変わった点、資格・指定学科・10年の実務経験の3つの道と判定表
専任技術者は、建設業許可の営業所ごとに置く技術の責任者で、2024年12月13日施行の改正で「営業所技術者等」という呼び名に変わりました。要件は、資格を持っているか、指定学科を出て3年か5年の実務経験があるか、10年の実務経験があるかの3つの道です(建設業法第7条第2号)。この記事では、要件の確かめ方と「専任」の意味を、架空の会社の5人の判定例で説明します。
目次
建設業許可の要件の中で、会社がいちばん頭を悩ませるのが専任技術者です。経営の経験は社長1人で満たせても、技術者は業種ごとに、しかも営業所ごとに置く必要があるからです。技術者が退職すると、その業種の許可を続けられなくなることもあります。
一般には、施工管理技士などの資格を持つ社員を専任技術者にし、資格者がいない業種は実務経験で証明する形が多く見られます。この記事では、株式会社サンプル工務(内装仕上工事業と大工工事業の知事許可)の社員5人を例に、専任技術者の要件を順に確かめていきます。
専任技術者とは|2024年12月から営業所技術者に呼び名が変わった
専任技術者とは、建設業許可を受ける会社が営業所ごとに専任で置く、技術の責任者のことです。建設業法第7条第2号では、建設工事の請負契約の締結と履行の業務について、技術上の管理をつかさどる者と書かれています。見積や契約の技術的な中身を、営業所で確かめる役目です。
呼び名は、2024年12月13日施行の建設業法の改正で「営業所技術者等」に変わりました。沖縄県の様式の案内では、この名称の変更にあわせて様式第八号(営業所技術者等証明書)と様式第二十二号の二(変更届出書)を直したこと、名称だけの変更なので記入例は「専任技術者」を「営業所技術者等」に読み替えてほしいことが書かれています。
| 呼び名 | 中身 |
|---|---|
| 営業所技術者 | 一般建設業の許可の営業所に置く技術者(建設業法 第7条第2号) |
| 特定営業所技術者 | 特定建設業の許可の営業所に置く技術者(建設業法 第15条第2号) |
| 営業所技術者等 | 上の2つをまとめた呼び方(旧 専任技術者) |
この記事では、検索で多く使われている「専任技術者」を主に使い、法令の言葉は営業所技術者と書きます。要件の中身は、呼び名が変わる前と同じ、資格・指定学科+実務経験・10年の実務経験の3つです。
専任技術者の要件が許可の基準になっている理由
専任技術者の要件が許可の基準になっている理由は、山梨県の手引きに説明があります。建設工事を適正に施工するには、許可を受ける業種の工事について専門の技術者(国家資格者か実務経験者)がいることが必要で、建設業の営業の中心は各営業所にあるので、営業所ごとに技術者を置く必要がある、という考え方です。そこに置かれる人は常にその営業所に勤めているのが適切なので、専任であることが求められています。
この考え方を知っておくと、迷う場面で判断しやすくなります。たとえば、本店と支店の2つの営業所で同じ業種の工事を受けるなら、それぞれの営業所に専任技術者が要ります。1人の技術者が2つの営業所を掛け持ちすることは、「ほかの営業所で専任を求められている人」に当たるので、原則としてできません。営業所を増やす計画があるときは、技術者の人数から先に確かめておくのが良いです。
専任技術者の要件は3つの道|資格・指定学科・10年
専任技術者の要件は、建設業法第7条第2号のイ・ロ・ハの3つです。どれか1つを満たせば、一般建設業の許可の専任技術者になれます。
| 区分 | 要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| イ | 指定学科を修めて、高校卒業後5年以上、または大学・高専卒業後3年以上の実務経験 | 建設業法 第7条第2号イ |
| ロ | その業種の10年以上の実務経験 | 建設業法 第7条第2号ロ |
| ハ | 国土交通大臣がイ・ロと同等以上と認めた人(国家資格者など) | 建設業法 第7条第2号ハ |
指定学科とは、業種ごとに決められた学科のことで、たとえば土木工学や建築学などです。どの業種にどの学科が当たるかは、提出先の手引きの「指定学科表」に一覧があります。山梨県の建設業許可の手引き(令和8年版)にも指定学科表と、技術検定の種目と同じとみなす指定学科の表が載っています。
専任技術者の要件を確かめる順番は、資格から見るのが早道です。資格が無ければ学歴と指定学科、それも無ければ10年の実務経験、と順に見ていきます。
- 資格を見るその業種の資格表に載っている資格があるか(あれば多くはそのまま満たす)
- 合格後の年数を見る資格表に【3年】【5年】とある資格(技士補など)は、合格後の実務経験の年数を確かめる
- 学歴を見る資格が無ければ、指定学科を出ているか(大学・高専は3年、高校は5年の実務経験)
- 10年を見る指定学科でなければ、その業種の実務経験が10年以上あるか
- 専任を確かめるその営業所に常勤していて、ほかで専任を求められていないか
専任技術者の要件を資格で満たす|資格表の見方と技士補
専任技術者の要件を資格で満たすときは、提出先の手引きの「技術者の資格表」で、その資格が許可を受けたい業種に使えるかを見ます。資格表は、行に資格、列に29の業種が並び、使える組み合わせに記号が付いた表です。山梨県の手引きの資格表では、法第7条第2号ハに当たる国家資格者などに「7」、そのうち合格後に実務経験が要るものに「7※」(実務経験3年)、「7○」(実務経験5年)の印が付いています。
施工管理技士の第一次検定に合格した人(技士補)は、この「合格後の実務経験が要る」区分に入るものがあります。山梨県の手引きの資格表の備考には、資格区分の右端に書かれた年数は、その資格試験の合格後に必要な実務経験の年数で、資格証の写しのほかに様式第九号(実務経験証明書)が必要と書かれています。
| 資格表の印(山梨県の例) | 意味 | 出す書類 |
|---|---|---|
| 7 | 資格だけで満たす | 資格証の写し |
| 7※ | 資格+合格後の実務経験3年 | 資格証の写し+実務経験証明書 |
| 7○ | 資格+合格後の実務経験5年 | 資格証の写し+実務経験証明書 |
ポイントはここです。同じ資格でも、業種によって「7」になったり「7※」になったり、印が無かったりします。資格の名前だけで判断せず、許可を受けたい業種の列で必ず確かめます。
専任技術者の要件を実務経験で満たす|年数の数え方
専任技術者の要件を実務経験で満たすときは、その業種の工事に技術上の仕事として携わった期間を数えます。山梨県の手引きでは、実務の経験とは建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、建設工事の雑務だけの期間は含まないとされています。一方で、設計技術者として設計に従事した経験、現場監督技術者として監督に従事した経験、土工やその見習いに従事した経験は含まれるとされています。
気をつけたいのが、電気工事と消防施設工事です。山梨県の手引きでは、電気工事業は電気工事士法、消防施設工事業は消防法の定めにより、資格の無い人の実務経験は原則として認められないとされています。また、技術的に共通性の強い業種どうしでは、実務経験の年数の振り替えが認められる場合があるとも書かれていて、詳しくは窓口で確かめるよう案内されています。
実務経験の期間は、実務経験証明書(様式第九号)で証明します。山梨県の手引きでは、申請する業種について証明期間の各月ごとの証明が必要で、裏付けとして工事請負契約書の写しなどを各月1件以上出すとされています。証明書の書き方と月数の数え方は実務経験証明書の書き方で説明しています。
特定建設業の専任技術者の要件
特定建設業の許可の専任技術者(特定営業所技術者)は、要件が一段上がります。建設業法第15条第2号では、1級の国家資格などに合格した人か、一般の要件を満たしたうえで、発注者から直接請け負った一定の金額以上の工事について2年以上の指導監督的な実務の経験がある人とされています。山梨県の手引きでは、この金額は4,500万円以上と書かれています。
土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種は指定建設業とされ(建設業法施行令第5条の2)、特定建設業の専任技術者は、1級の資格などに限られます。指導監督的な実務経験では足りない点が、ほかの業種と違うところです。
専任技術者の「専任」の要件|当てはまらない5つの例
専任技術者の要件には、資格や経験のほかに「専任」であることが入っています。山梨県の手引きでは、専任とはその営業所に常勤(テレワークを含む)して、もっぱらその仕事に従事することとされ、次のような人は原則として専任とはいえないとされています。
- 住所やテレワークの場所が営業所から著しく遠く、常識上通えない人
- ほかの営業所(ほかの建設業者の営業所を含む)で専任を求められている人
- 管理建築士や専任の宅地建物取引士など、ほかの法令で特定の事務所に専任を求められている人(同じ場所で兼ねる場合を除く)
- ほかに個人の営業をしている人や、ほかの法人の常勤の役員・従業員など、ほかの仕事に専任に近い人
- 地方自治体の首長・議長・議員
同じ手引きでは、1人が複数の業種の要件を満たしていれば、その人を複数の業種の専任技術者として扱えること、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)が専任技術者を兼ねることは勤務場所が同じなら差し支えないことも書かれています。小さな会社で、社長が経営と技術の両方の要件を満たしているなら、1人で両方を担える形です。常勤役員等の要件は経営業務管理責任者の要件にまとめました。
専任技術者の要件の判定例|5人で確かめる
専任技術者の要件の判定例として、株式会社サンプル工務の社員5人を確かめると次のようになります(資格と年数は架空、資格表で確かめた結果として書いています)。
| 氏名 | 業種 | 資格・学歴 | 実務経験 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 山田 太郎 | 内装仕上工事 | 2級建築施工管理技士(仕上げ)、資格表で該当 | 12年 | 資格で満たす |
| 佐藤 一郎 | 大工工事 | 資格なし、大学の指定学科 | 4年 | 指定学科+実務経験(3年)で満たす |
| 鈴木 花子 | 内装仕上工事 | 1級建築施工管理技士補(合格後3年が要る区分) | 合格後2年 | 合格後の実務経験があと1年 |
| 田中 次郎 | 内装仕上工事(特定) | 1級建築施工管理技士 | 15年 | 資格で満たす(特定の要件も確かめる) |
| 高橋 三郎 | 大工工事 | 資格なし、高校(指定学科でない) | 7年 | 10年に届かず、あと3年 |
この会社は、内装仕上工事は山田さんか田中さん、大工工事は佐藤さんで要件を満たせます。鈴木さんは来年、合格後3年に届けば内装仕上工事の専任技術者になれます。高橋さんは今のままだと3年足りないので、資格の取得を勧めるか、指定学科以外の道で満たせないかを窓口で確かめる、という判断になります。
ポイントはここです。今の専任技術者だけでなく、交代できる人を業種ごとに1人以上見つけておくと、退職や異動があっても許可を守れます。専任技術者が交代したときは2週間以内に届け出ます(建設業法第11条第4項)。届出の流れは建設業許可の変更届で説明しています。
専任技術者の要件を無料テンプレートで確かめるには
専任技術者の要件を確かめるのに時間がかかるのは、社員ごとに資格表・学歴・年数を見比べる作業です。業種が増えるほど組み合わせが多くなり、誰がどの業種の要件を満たすかが分かりにくくなります。
許可フクロウの無料テンプレート「営業所技術者(旧 専任技術者)の要件確認表」は、1人1行で、業種・一般か特定か・資格・資格表で該当するか・合格後に要る年数・最終学歴・指定学科か・実務経験の年数を入れると、判定を自動で出すExcelです。判定は「資格で満たす」「指定学科+実務経験で満たす」「10年の実務経験で満たす」「不足:あと○年」のどれかで表示されます。
特定の行には追加の要件の注意が出て、下には「専任」の6項目のチェック欄があります。上の5人の判定例は、このテンプレートの記入例と同じ内容です。
| 営業所技術者(旧 専任技術者)の要件確認表 | ||||||||||||
| 商号 | 株式会社サンプル工務 | 確認した日 | 2026年10月24日 | |||||||||
| 1人1行。資格表は提出先の手引きの「技術者の資格表」で見ます(業種ごとに使える資格が決まっています)。資格表の年数欄に【3年】【5年】などと書かれた資格(技士補など)は、合格後の実務経験の年数を「資格の後に要る実務経験」に入れます。 | ||||||||||||
| No. | 氏名 | 許可を受けたい業種 | 一般・特定 | 資格の名前 | 資格表で該当するか | 資格の後に要る実務経験(年) | 最終学歴 | 指定学科か | 実務経験(年) | 実務経験だけで要る年数 | 判定 | 特定のときの確認 |
| 1 | 山田 太郎 | 内装仕上工事 | 一般 | 2級建築施工管理技士(仕上げ) | 該当 | 0 | 高校 | いいえ | 12 | 10 | 資格で満たす | |
| 2 | 佐藤 一郎 | 大工工事 | 一般 | なし | 該当しない | 大学・高専 | はい | 4 | 3 | 指定学科+実務経験で満たす | ||
| 3 | 鈴木 花子 | 内装仕上工事 | 一般 | 1級建築施工管理技士補 | 該当 | 3 | 高校 | いいえ | 2 | 10 | 資格の後の実務経験があと1年 | |
| 4 | 田中 次郎 | 内装仕上工事 | 特定 | 1級建築施工管理技士 | 該当 | 0 | 大学・高専 | はい | 15 | 3 | 資格で満たす | 1級の資格などか、4,500万円以上の元請工事で2年以上の指導監督的な実務経験が要る(指定建設業7業種は1級の資格などに限る) |
| 5 | 高橋 三郎 | 大工工事 | 一般 | なし | 該当しない | 高校 | いいえ | 7 | 10 | 不足:実務経験があと3年 | ||
| 6 | ||||||||||||
| 7 | ||||||||||||
| (空欄があと3行つづきます) | ||||||||||||
| 専任(その営業所に常勤して、もっぱらその仕事をする)の確認 | ||||||||||||
| 確かめること | 確認 | |||||||||||
| 休日を除き、通常の勤務時間にその営業所で働いている(テレワークを含む) | 済 | |||||||||||
| 住所(テレワークの場所)から営業所まで、常識的に通える距離にある | 済 | |||||||||||
| ほかの営業所(ほかの建設業者を含む)で専任を求められていない | 済 | |||||||||||
| 管理建築士・専任の宅地建物取引士など、ほかの法令で専任の人と兼ねていない(同じ場所で兼ねる場合を除く) | 済 | |||||||||||
| ほかに個人の営業をしていない・ほかの会社の常勤の役員や従業員ではない | 済 | |||||||||||
| 常勤が分かる書類(健康保険・厚生年金の標準報酬決定通知書の写しなど)がある | ||||||||||||
| 指定学科は「高校卒業後5年以上・大学(高専)卒業後3年以上」の実務経験、指定学科でなければ10年以上の実務経験が目安です(建設業法第7条第2号)。電気工事・消防施設工事は、資格の無い人の実務経験が原則として認められません。専門学校卒業の扱いと、業種どうしの実務経験の振り替えは提出先の窓口で確かめてください。 | ||||||||||||
社員の資格や年数は毎年変わるので、決算変更届のたびに見直すと、交代できる人の候補がいつも分かる状態になります。ほかの書類のテンプレートも、テンプレートの一覧から無料で使えます。
専任技術者の要件のよくある質問
専任技術者と営業所技術者は、要件が違いますか?
2024年12月13日施行の改正で呼び名が変わりましたが、要件の中身(資格・指定学科+実務経験・10年の実務経験)は建設業法第7条第2号のとおりです。沖縄県の案内でも、名称だけの変更なので記入例は読み替えるよう書かれています。
専任技術者は、現場の主任技術者を兼ねられますか?
専任技術者は営業所に常勤してもっぱらその仕事をする人なので、工事現場に専任で張り付く役目と兼ねる場合には決まりがあります。兼ねられるかどうかと、その条件は、提出先の手引きで確かめてください。
パートや派遣の社員でも専任技術者になれますか?
山梨県の手引きでは、専任といえるには雇用契約などで会社と継続的な関係があり、休日などを除いて通常の勤務時間中は営業所に勤務できることが必要とされています。常勤であることを示す書類(健康保険・厚生年金の標準報酬決定通知書の写しなど)も求められます。
専門学校を出た人の実務経験は何年ですか?
建設業法第7条第2号イには高校と大学・高専の年数が書かれています。専門学校を出た人の扱いは施行規則などで別に決まっているので、提出先の手引きで確かめてください。
専任技術者の要件のまとめ
専任技術者(2024年12月13日から営業所技術者等)の要件は、資格・指定学科+実務経験(大学・高専3年、高校5年)・10年の実務経験の3つの道です。資格は業種ごとの資格表で確かめ、技士補などは合格後の実務経験の年数も見ます。特定建設業はさらに1級の資格か指導監督的な実務経験が要り、指定建設業7業種は1級の資格などに限られます。
そのうえで、その営業所に常勤して専任であることが要件です。業種ごとに交代できる人を見つけておけば、技術者の退職があっても許可を続けやすくなります。
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