実務経験証明書の書き方|建設業許可の様式第九号の記入例、月数の数え方、裏付けの書類
実務経験証明書は、専任技術者(営業所技術者等)を資格ではなく実務経験で証明するときに出す書類で、建設業法施行規則の様式第九号です。業種ごと・技術者1人ごと・証明者ごとに作り、合計の欄に「満○年○か月」を書きます。この記事では、欄ごとの書き方と期間の数え方、窓口が求める裏付けの書類を、架空の技術者の経歴で説明します。
目次
資格を持つ社員がいない業種で建設業許可を取るとき、頼りになるのが実務経験です。10年の実務経験、または指定学科を出て3年か5年の実務経験があれば、専任技術者の要件を満たせます。その経験を書面で示すのが実務経験証明書です。
一般には、今の会社での経験は今の会社が証明し、前の勤め先での経験は前の勤め先に証明を頼む形になります。書類そのものは1枚ですが、10年分の工事を思い出し、各月の裏付けの書類をそろえるのに手間がかかります。この記事では、株式会社サンプル工務の技術者(伊藤 健一さん・内装仕上工事)の経歴を例に、実務経験証明書の書き方を順に見ていきます。
実務経験証明書とは|専任技術者を実務経験で証明する様式第九号
実務経験証明書とは、建設業法施行規則の別記様式第九号で決まっている、技術者の実務の経験を使用者(雇っていた会社)が証明する書類です。専任技術者の要件のうち、建設業法第7条第2号のイ(指定学科+実務経験)とロ(10年の実務経験)で証明するときに使います。資格表で合格後の実務経験が要る資格(技士補など)の場合も、山梨県の建設業許可の手引き(令和8年版)の資格表の備考で、資格証の写しのほかに様式第九号が必要とされています。
様式第九号の上には、「下記の者は、 工事に関し、下記のとおり実務の経験を有することに相違ないことを証明します。」という文があり、空欄に業種の工事名(内装仕上工事など)を入れます。その下に証明者と被証明者との関係、技術者の氏名、使用された期間、表の部分に職名・実務経験の内容・実務経験年数を書き、最後に合計を書く形です。
| 証明に使う道 | 要る年数 | 実務経験証明書 |
|---|---|---|
| 指定学科(大学・高専)+実務経験 | 3年以上 | 要る(卒業証明書も) |
| 指定学科(高校)+実務経験 | 5年以上 | 要る(卒業証明書も) |
| 10年の実務経験 | 10年以上 | 要る |
| 資格(合格後の実務経験が要る区分) | 資格表の年数 | 要る(資格証の写しも) |
実務経験証明書の書き方|欄ごとの記入例
実務経験証明書の書き方は、様式第九号の記載要領に書かれています。記載要領の1では、この証明書は許可を受けようとする業種ごとに、被証明者1人について、証明者別に作るとされています。伊藤さんのように同じ会社に10年勤めていれば1枚ですが、途中で転職していれば、前の会社の分を別の1枚にします。
| 欄 | 書き方(記載要領) | 記入例 |
|---|---|---|
| 工事に関し | 許可を受けたい業種 | 内装仕上 |
| 証明者 | 使用者(雇っていた会社)の商号・名称 | 株式会社サンプル工務 |
| 被証明者との関係 | 証明者と技術者の関係 | 雇用主 |
| 技術者の氏名・使用された期間 | 技術者の名前と、その会社に勤めた期間 | 伊藤 健一・2016年4月から現在 |
| 職名 | 被証明者が所属していた部課名など(記載要領2) | 工事部 施工課 |
| 実務経験の内容 | 従事した主な工事名などを具体的に(記載要領3) | 〇〇ビル新築工事の内 内装工事(ボード・クロス張り) |
| 実務経験年数 | 年月から年月まで | 2016年4月から2018年3月まで |
| 合計 | 実務経験年数の合計(記載要領4) | 満10年0か月 |
実務経験の内容は、「内装工事一式」のようなまとめ方ではなく、工事名を具体的に書きます。窓口は、この工事名と裏付けの書類(契約書など)を照らし合わせて、本当にその業種の工事に携わっていたかを確かめます。期間ごとに代表的な工事名を2つか3つ挙げておくと、照らし合わせがしやすくなります。
実務経験証明書といっしょに出す書類
実務経験証明書は、それだけで出すことは少なく、証明に使う道に合わせて別の書類と組み合わせます。指定学科+実務経験の道なら、学科を修めたことを示す卒業証明書が要ります。山梨県の手引きの提出書類一覧表にも、実務経験証明書・指導監督的実務経験証明書と並んで、指定学科に係る卒業証明書が載っています。
資格表で合格後の実務経験が要る資格なら、資格証の写しと実務経験証明書の2つです。このとき、実務経験は合格したあとの期間で数える点に気をつけます。合格前の経験を足して年数を満たしたつもりでいると、合格後の年数が足りないことがあります。営業所技術者等証明書(様式第八号)には、どの道で証明するかの区分を書く欄があるので、証明書の組み合わせと区分が合っているかも確かめます。
実務経験証明書の期間の数え方|月数と「満○年○か月」
実務経験証明書の期間は、年と月で書き、合計を「満○年○か月」で表します。月数を数えるときは、始まりの月と終わりの月の両方を数えるのが分かりやすい方法です。2016年4月から2018年3月までなら、4月から翌々年の3月までの24か月です。
伊藤さんの経歴を月数にすると、次のようになります。
| 職名 | 実務経験の内容 | 期間 | 月数 |
|---|---|---|---|
| 工事部 施工課 | 〇〇ビル新築工事の内 内装工事 | 2016年4月〜2018年3月 | 24 |
| 工事部 施工課 | 〇〇マンション改修工事の内 内装工事 | 2018年4月〜2021年9月 | 42 |
| 工事部 工事課 主任 | 〇〇クリニック内装工事ほか | 2021年10月〜2026年3月 | 54 |
| 合計 | 120(満10年0か月) |
合計は120か月で、ちょうど満10年です。10年の実務経験で専任技術者の要件を満たす計算になります。1か月でも足りないと要件を満たさないので、期間の始まりと終わりは、工事の契約書や社内の記録で確かめてから書きます。
実務経験証明書で年数が足りないとき
実務経験証明書で数えた年数が足りないときは、いくつかの道を比べます。1つ目は、足りない月数が過ぎるのを待って申請する方法です。月数が分かっていれば、いつ申請できるかも決まります。2つ目は、指定学科を出ているなら、10年ではなく3年か5年の道で証明できないかを確かめる方法です。卒業した学科が指定学科に当たるかは、提出先の手引きの指定学科表で見ます。
3つ目は、資格の道です。施工管理技士の第一次検定に合格すると、業種によっては合格後の実務経験(資格表の【3年】【5年】など)で要件を満たせる区分があります。4つ目は、社内のほかの技術者で要件を満たす人を探す方法です。どの道が早いかは人によって違うので、年数と学歴、資格の予定を並べて比べるのが良いです。
ポイントはここです。期間が重なっている行があると、同じ月を2回数えることになります。山梨県の手引きでは、申請する業種について証明期間の各月ごとの証明が必要で、重複が認められるのは実務経験と指導監督的実務経験との重複だけとされています。2つの業種の許可を実務経験で取る場合も、同じ期間を両方の業種に重ねて数えることはできない前提で計画します。
実務経験証明書の裏付けの書類|各月の工事の証明
実務経験証明書は、使用者が証明すれば終わりではなく、その期間に実際に工事をしていたことを示す書類を求められます。山梨県の手引きの確認書類一覧表では、営業所技術者等の資格要件として実務経験が必要な場合、工事請負契約書の写しを各月1件以上出すとされています。
同じ手引きの注記では、工事の期間と内容の記載があれば、領収証や入金の状況が確かめられる書類を添えたうえで、注文書・発注書・工事請書・請求書でもよいとされています。契約書を交わしていない小さな工事が多い会社でも、注文書と入金の記録をそろえれば裏付けにできるということです。
| 場面 | 求められることがある書類(山梨県の例) |
|---|---|
| 各月の工事の証明 | 工事請負契約書の写し(各月1件以上)。注文書・請求書などに入金が分かる書類を添えてもよい |
| 申請する会社とは別の会社での経験 | 社会保険の加入証明書(その会社に在籍していたことを示す) |
| 個人事業主として働いていた期間 | 確定申告書の控えの写し |
沖縄県の様式の案内では、令和6年10月に、実務経験で専任技術者になる場合の確認書類を見直し、様式第九号の記入例を直したことと、建設工事発注証明書の様式と記入例を載せたことが書かれています。裏付けの書類の扱いは都道府県によって違い、改められることもあるので、提出先の最新の手引きで確かめてから集め始めるのが確かです。
実務経験証明書を前の勤め先に頼むとき
実務経験証明書は使用者が証明する書類なので、前の勤め先での経験は、前の勤め先に証明してもらう必要があります。何年も前に辞めた会社に頼むことになるので、相手の手間を減らす段取りが大事です。
- 下書きを作る自分で期間・職名・主な工事名を書いた実務経験証明書の下書きを作る
- 裏付けを確かめる各月の工事の契約書・注文書の写しを前の勤め先が出せるか聞く
- 依頼する下書きと、記入してほしい欄、提出期限を添えて証明を頼む
- 受け取って確かめる証明者の欄・期間・合計が下書きどおりか確かめる
- 窓口に出す今の会社の分の証明書と合わせて、業種ごとにそろえて出す
前の勤め先が廃業していたり、協力を得られなかったりする場合もあります。様式第九号の記載要領には、使用者の証明を得ることができない場合の書き方も書かれているので、その場合は記載要領と提出先の手引きを確かめ、窓口に事前に相談します。
実務経験証明書でよくある間違いと直し方
実務経験証明書でよくある間違いを、欄の名前で並べます。窓口で差し戻されるのは、年数の不足と、裏付けとの食い違いがほとんどです。
| よくある間違い | 直し方 |
|---|---|
| 2社分の経験を1枚にまとめて書いた | 記載要領で、証明者別に作るとされている。会社ごとに1枚ずつ作る |
| 実務経験の内容に「内装工事一式」とだけ書いた | 従事した主な工事名を具体的に書く |
| 期間が重なった行を両方数えた | 重なった月は1回だけ数える。合計の月数を数え直す |
| 雑務だけの期間を入れた | 山梨県の手引きでは、建設工事の雑務のみの経験年数は含まないとされている |
| 電気工事の実務経験を、資格のない期間で数えた | 山梨県の手引きでは、電気工事業・消防施設工事業は資格のない人の実務経験は原則として認められないとされている |
もうひとつ、合計の書き方にも気をつけます。「10年」とだけ書くのではなく、様式の「合計 満 年 月」の欄に合わせて「満10年0か月」と書きます。月数で数えた合計と、満の年月が合っているかも見ておきます。専任技術者の要件そのものの確かめ方は専任技術者の要件で説明しています。
実務経験証明書を無料エクセルで速くするには
実務経験証明書で時間がかかるのは、10年分の期間を月数に直して足す作業と、重なりの確認です。転職の多い技術者ほど行が増え、電卓での計算は間違いやすくなります。
許可フクロウの無料テンプレート「実務経験証明書(様式第九号)期間の自動計算つき」は、様式第九号の項目に沿った下書き用のエクセルです。職名・実務経験の内容・開始と終了の年月日を入れると、行ごとの月数(始まりと終わりの月を含む)と、合計の月数、「満○年○か月」が自動で出ます。開始が前の行の終了以前だと「前の行と期間が重なっています」と表示されます。
下には要る年数の欄があり、10・5・3などを入れると「要る年数に足りています」か「あと○か月足りません」と出ます。裏付けの書類のメモ欄もあるので、各月の契約書や注文書を集めるときのチェックにも使えます。伊藤さんの記入例では、合計120か月で「満10年0か月」「要る年数に足りています」と表示されます。
| 実務経験証明書(様式第九号の項目に沿った下書き・期間の自動計算つき) | |||||||
| 許可を受けたい業種 | 内装仕上工事 | 証明する日 | 2026年10月24日 | ||||
| 証明者(使用者)の商号又は名称 | 株式会社サンプル工務 | 被証明者との関係 | 雇用主 | ||||
| 技術者の氏名 | 伊藤 健一 | 使用された期間 | 2016年4月〜現在 | ||||
| 証明書は、許可を受けたい業種ごと、技術者1人ごと、証明者(勤め先)ごとに作ります。「職名」には所属していた部課名など、「実務経験の内容」には従事した主な工事名を具体的に書きます。 | |||||||
| No. | 職名 | 実務経験の内容(主な工事名) | 開始(年月日) | 終了(年月日) | 月数 | 期間の重なり | 裏付けの書類 |
| 1 | 工事部 施工課 | 〇〇ビル新築工事の内 内装工事(ボード・クロス張り) | 2016/04/01 | 2018/03/31 | 24 | 注文書・請求書(各月1件) | |
| 2 | 工事部 施工課 | 〇〇マンション改修工事の内 内装工事 | 2018/04/01 | 2021/09/30 | 42 | 工事請負契約書の写し | |
| 3 | 工事部 工事課 主任 | 〇〇クリニック内装工事ほか | 2021/10/01 | 2026/03/31 | 54 | 工事請負契約書・注文書の写し | |
| 4 | |||||||
| 5 | |||||||
| (空欄があと7行つづきます) | |||||||
| 月数の合計 | 120 | 同じ期間を2回数えていないか、上の「期間の重なり」で確かめる | |||||
| 合計(満○年○か月) | 満10年0か月 | 証明書の「合計 満 年 月」の欄に写す | |||||
| 要る年数(年) | 10 | 指定学科なし10年・高校の指定学科5年・大学(高専)の指定学科3年など | |||||
| 判定 | 要る年数に足りています | ||||||
| 窓口は、証明する期間について実際に工事をしていたことを書類(工事請負契約書・注文書・請求書など)で確かめます。山梨県の手引きでは、申請する業種について証明期間の各月ごとの証明が必要で、実務経験の裏付けは各月1件以上とされています。必要な書類は提出先の手引きで確かめてください。 | |||||||
提出用は、窓口が配る様式第九号に、期間と工事名、合計を写します。前の勤め先に頼むときの下書きとしても使えます。ほかの書類のテンプレートも、テンプレートの一覧から無料で使えます。
実務経験証明書の書き方のよくある質問
実務経験証明書は自分で書いてもいいですか?
実務経験証明書は、使用者(雇っていた会社)が証明する書類です。下書きは技術者本人や今の会社が作って構いませんが、証明者の欄は使用者になります。個人事業主として働いていた期間など、使用者がいない場合の書き方は、記載要領と提出先の手引きで確かめてください。
実務経験の月数は、日割りで数えますか?
様式第九号は年と月で期間を書く形です。この記事の数え方は、始まりの月と終わりの月を両方数える方法です。月の途中の入社や退職の扱いは、提出先の窓口で確かめてください。
アルバイトの期間も実務経験に入りますか?
実務の経験は、建設工事の施工に関する技術上の職務の経験かどうかで見ます。雇用の形だけで決まるものではありませんが、裏付けの書類が求められるので、その期間の在籍と工事を書類で示せるかが分かれ目になります。
実務経験証明書の期間は、どこまでさかのぼれますか?
扱いは提出先の窓口で確かめてください。どの窓口でも、古い期間ほど契約書などの裏付けをそろえるのが難しくなるので、書類が残っている期間から数えるのが現実的です。
実務経験証明書の書き方のまとめ
実務経験証明書(様式第九号)は、業種ごと・技術者1人ごと・証明者ごとに作り、職名には部課名、実務経験の内容には主な工事名を具体的に書きます。期間は年と月で書き、合計は「満○年○か月」です。重なった期間は1回だけ数えます。
窓口は、各月の工事を契約書や注文書などで確かめます。証明書を書く前に、裏付けの書類がそろう期間かどうかを確かめておくと、書き直しや差し戻しを減らせます。
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